接触式・非接触式測定によるフリーフォーム測定
近年では、自動車の自動運転技術でのセンサ用途やHUD用途、またVRゴーグルなど、新しく発展しつつある分野での需要を中心に特に注目されている軸外し等の非回転対称の光学部品ですが、「自由曲面」という言葉通りその形状は多岐にわたり、その評価法もさまざまです。
テーラーホブソンでは接触式形状粗さ測定機フォームタリサーフのさらなる発展タイプと、高精度非接触三次元レンズ形状測定システムLUPHOScanの新しいソフトウェアモジュールにより、様々な形状の光学部品の測定に対応できます。
LUPHOScanによるフリーフォーム形状測定
高精度・高速に光学部品の形状測定可能なLUPHOScanシステムでは、これまで基本的に回転対称形状のみに測定対象が限定されていました。2018年にリリースされた新しい「カスタム・デザイン」ソフトウェアモジュールは、プローブの持つ許容受光角度を限界まで利用することで、回転対称から逸脱した、多項式形状や軸外し形状、 双円錐(バイコニック)、トーリック、対称双非球面(バイ・アスフェリック)、マルチゾーン非球面といったフリーフォーム部品の測定が可能になりました。
測定可能な形状

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カスタムデザインモジュールでは、回転対称から逸脱した表面からの反射をプローブの受光角度内で捉える必要があります。そのため、非回転方向の傾斜量(最大接線勾配)が、一定の範囲内(通常型プローブで±5度、高NAプローブで±10度)に収まっている必要があります。
LUPHOScanはR(X)軸、Z軸、回転C(θ)軸、対物プローブ姿勢変更用T軸の4軸を備えています。スピンドル上で測定対象を回転させながら測定するLUPHOScanでは、非回転方向の傾斜量が上記図のY軸の傾きとして表れます。これを「接線勾配(Tangential Slope)」と呼びます。この傾斜量が前述したとおり、通常のプローブでは±5度以内、±10度以内に収まっていることが、測定可能なサンプルのまず第一の条件です。
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7度の接線勾配をもつ
フリーフォームミラー |
10度の接線勾配を持つ4次多項式
フリーフォーム形状 |
新型プローブ
LUPHOScanにはこれまでA/B/F(フレネル)の用途別の三種類の対物プローブが存在しました。これら標準プローブはワーキングディスタンス2.7mmで接線勾配±5度まで対応します。
現在ではフリーフォームの測定により適した高NAのプローブが追加されています。これにより最大で接線勾配±10度まで測定が可能で、さらに細く絞られたプローブ先端形状と2.5mmのワーキングディスタンスが、これまでアクセスできなかった形状の測定を可能にします。
高NAスリムプローブ

PGIフリーフォームによるフリーフォーム測定
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新設計の最大28mmの測定レンジのPGIゲージと、回転ステージおよびYステージを備えた新しい光学産業向け形状測定機、それがPGIフリーフォームです。
光学産業向けに全く新しくデザインされ、非球面係数や各種定義方程式の入力だけで測定が可能(もちろん定義式なしでも測定可能)な新ソフトウェアを搭載しており、これまでのフォームタリサーフシリーズよりも遥かに簡単・かつ便利に測定が可能です。
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3D校正法と新ソフトウェア
これまでのフォームタリサーフシリーズとは異なる、新開発の3D校正ルーチンを搭載しています。
サインバー方式の触針式測定機でのラスター(熊手)スキャンと呼ばれる、対象サンプルをY軸方向に送って順番に測定していく方式では、以下の誤差要因が想定されます。
- Yステージの直交性の誤差
- Yステージゲイン誤差(位置制御誤差)
- スタイラス平面の誤差(スタイラスの運動が作り出す面のブレを二次成分まで補正)
- スタイラスのX軸角度誤差(X軸を基点にしたスタイラスの傾き)
これらの誤差を、弊社UKAS認定ラボにて校正した3D校正球を測定することで特定し、補正するのがこの新しい3D校正ルーチンです。これによりフリーフォーム面の形状測定精度<150nmを達成しています。
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3D校正ボール |
生データ |
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形状除去後形状エラー(3D校正前) |
形状除去後誤差(3D校正後)
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ご欄のように、加工の「へそ」を含めた非常に詳細な情報を得ることが可能です。また、下図の通り、同サンプルのLUPHOScanによる測定結果とも非常に高い相関が取れています。
PGIによる測定結果(左)とLUPHOScanによる測定結果(右)